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野球選手の「走り込み」は、中身が適切であれば必要です。ただ何となく走り込んだり、走り込めばうまくなると思ってやるのでは少し考える必要があるんですね。

特に冬場は、伝統的に走り込むチームも多いはず。実はこの時間が、自己満になっていることも少なくありません。

目的を整理した上で実践すれば、野球のパフォーマンス向上につながり、チームや選手の基礎体力を向上させることにつながります。

この記事では、

・野球選手が行う走り込みの必要性
・走り込みのメリット・デメリット
・走り込みで得られる効果や具体的な方法

などをパーソナルトレーナー歴12年の伊藤出(@izuru_style)が解説します。

 

野球選手が行う走り込みの必要性とは?

野球選手の走り込みって、本当に必要でしょうか?結論から言えば、

野球選手が行う走り込みは、目的によって必要性が変わる

ということです。

走り込みの目的の整理が最重要

例えば、

投手のスタミナをつける

という目的で走り込みをさせようと思う場合、「投手が必要とするスタミナ」とはどんなスタミナなのか、を考える必要があります。

・心拍数が上がりづらくなるスタミナ
・多くの球数が投げられるスタミナ

投手に必要なスタミナは後者。

野球選手に必要な体力要素とは

では、投げるスタミナはどうやってトレーニングすればいいのでしょうか?

それは、

実際にボールを投げること

なんですね。走るときに必要なスタミナは走ればつきますが、球数を多く投げるスタミナは、ボールを投げなければつきません。

打者も同じ考え方で、より多くのバットスイングをするために必要なスタミナは、バットを振ることでしかつけられません。この場合も走り込みではありません。

つまり、ここまでの話で野球選手にとっての“走り込みの必要性”は、そこまで見出せないわけです。

実際に指導する走り込みの内容

ただ実際に、現場で走り込みの指導をすることもあるんですね。

僕が走り込みを指導するときは、

1、練習をこなせるスタミナの養成
2、3~6歩でトップスピードにのるトレーニング
3、下半身の筋力強化のトレーニング
4、踵で地面を押すトレーニング

などの目的意識を持ってもらい、その中で走り込みを行っています。

こういう目的が明確であれば選手も進んでやってくれますし、実際目的通りの成果を実感することができます。

この具体的なやり方については、後程お伝えしますね。

目的のない走り込みは不要

ここまでお伝えした通り、

目的のない走り込みは一切不要

です。

そこから得られるものは多少精神的な強化になったとしても、野球に活きる何かが得られることはあまりありません。

もし得るものがあったとしてもそれはたまたまで、意図したものではないはず。

何度もお伝えしていますが、トレーナーという立場から考えると、基本的には一般的に行われる走り込みは不要ですね。

 

野球選手が走り込みを行うメリット

では、野球選手が目的を整理した上で走り込みを行った場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?それは以下の通りです。

1、持久力(スタミナ)の向上

5分間走
20分間走
・インターバル走

などの走り込みをする場合、これは心肺持久力が向上します。心肺持久力は、練習をこなすためには向上させておきたい体力要素。

ですので、長距離を走るような持久走では、

練習をより多くこなせる、持久力(スタミナ)がつく

ということです。

2、トップスピードにすぐのれる

2つ目のメリットは、3~6歩でトップスピードに乗るように走り込みをすれば、盗塁の成功率を上げることができるということ。

野球という競技では、数歩で加速してトップスピードに乗れるかが重要です。そのためのトレーニングとして、3~6歩でトップスピードに乗れるように走り込むことは意味あることなんですね。

ただこういった目的で走り込みをさせる場合は、3~6歩でどのように身体を使うのかという指導も必要になってきます。

3、下半身の筋力強化になる

3つ目のメリットは、少しゆっくりのペースで走り込みを行った場合、

下半身の筋肉がつき、筋力が向上する

ということが期待できます。

ランニングを行うと、体重の約4~5倍ほどの負荷が片脚にかかるんですね。

リズムよく筋肉を使えば、低酸素状態になって筋肉がつきやすい環境にもなる。その結果、下半身の筋力を向上させることができます。

4、下半身の使い方がうまくなる

4つ目のメリットは、

下半身の力を上半身に伝えやすくなる

ということ。

短い距離を走り込むときの1歩目で、踵で地面を押すようにスタートを切ります。

踝の真下で地面を押す、横から撮影

この「踵で地面を押す」動作は、

・バッティング
・ピッチング

の両面で活用でき、パフォーマンスアップにつながる可能性があるんですね。

ですので、こういった下半身の力をうまく上半身に伝えるためのトレーニングとしても走り込みは活用できます。

このように目的に合わせた走り込みをすることは、さまざまなメリットを得ることができるわけです。では逆に、走り込みをするデメリットはどのようなことがあるのでしょうか?

 

野球選手が走り込みを行うデメリット

デメリットは、以下の通り。

1、疲労の蓄積

もし目的のない走り込みを行ってしまった場合、

疲労が蓄積し、オーバーワークになってしまう

可能性があります。

これはいまだに高校野球などでよく見られることであり、本来であればもっと良いパフォーマンスを発揮できる状態の選手は多くいるはず。

それだけ無駄な走り込みは、選手に負担をかけてしまうわけです。

2、体重減少

2つ目のデメリットは、

体重が減ってしまう

ということ。

走り込みをすると、当然余分なエネルギーを使います。そうすると、

・エネルギーが不足する
・筋肉が小さくなる
・体重が減る
・パフォーマンスが落ちる

という流れが起こる可能性があるんですね。

最悪の場合は、オーバートレーニング症候群になってしまい、

・やる気の低下
・強い倦怠感
・頭の働きが低下する
・疲労骨折などをする

など、多くの不調などに悩まされるかもしれません。

目的のない走り込みは、これだけの危険性やデメリットが隠れています。

では目的をしっかりと理解した上で、上記でお伝えしたメリットを実感するためには、どういった走り込みをすればいいのでしょうか?

 

野球選手におすすめしたい走り込み方法①:練習をこなせるスタミナの養成

先ほどもお伝えした通り、以下の4つをご紹介します。

1、練習をこなせるスタミナの養成
2、3~6歩でトップスピードにのるトレーニング
3、下半身のトレーニング
4、踵で地面を押すトレーニング

目的意識をしっかり持った中で実践すると得るものが多いので、詳しく解説しますね。

持久力トレーニング

練習をこなすスタミナを養成する目的の場合は、

・5分間走
・20分間走
・インターバル走

などがおすすめ。

これらの方法は、

最大心拍数の約60%以上の強度

でトレーニングすれば、持久力を養成できるんですね。

具体的な方法については以下の記事で紹介しているので、練習をこなせるスタミナをつけたい方はぜひ参考にしてみてください。

あわせてコンディショニングについて理解を深めると、パフォーマンス向上のために何をすればいいのか?ということも理解してもらえると思います。

コンディショニングについては以下の記事で解説しているので、こちらもよかったらどうぞ。

 

野球選手におすすめしたい走り込み方法②:3~6歩でトップスピードにのるトレーニング

2つ目は、

数歩でトップスピードにのるという目的で行う走り込み

です。

より速くトップスピードに乗るために、30mダッシュなどを繰り返します。

やり方としては、

・リードをするような姿勢で構える
・スタートを切り、最初の3~6歩目はつま先で地面を押す
(この段階でトップスピードに乗る)
・6歩目以降は惰性で流し、リラックスして30m走る

という感じで繰り返すんですね。

そうするとトップスピードにいち早く乗れ、野球の走塁に活きる。

これを身につけるために、ある程度数をこなして走り込むという考え方です。

 

野球選手におすすめしたい走り込み方法③:下半身のトレーニング

3つ目は、

下半身のトレーニングとして走り込みを行う

という方法。

走り方によって下半身の筋力を強化することができますが、具体的には以下のような走り方を行います。

・地面を真下に踏み込むように、16~20歩ぐらい全力で走る
(これを何十本と行う)
・ゆっくりとしたペースで20分間ぐらい走る

どちらのケースも下半身の筋力が強化でき、筋肉をつけることができるんですね。

https://izuru-personal.com/wp-content/uploads/2023/04/吹き出し-300x300.jpg

前者の方法をその場でやると、こんなイメージ。

これでも数をこなせば、十分下半身の筋力強化は可能です。

ウエイトトレーニングができない場合は、こういった目的で走り込めば筋力トレーニングとして活用できます。

もしウエイトトレーニングなどで下半身を鍛えたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

 

野球選手におすすめしたい走り込み方法④:踵で地面を押すトレーニング

4つ目は、

踵で地面を押し、短いダッシュを繰り返す

という方法。

バッターもピッチャーも、下半身で全体の約60%のエネルギーを生みますが、そのエネルギーを体重移動と共に上半身へ伝えます。

打者の体重移動

投手の体重移動

このとき踵で地面を押すように体重移動ができると、バットやボールにうまく力が伝わるため、この踵で地面を押す感覚をショートダッシュでトレーニングします。

やり方はシンプルで、まず踝の真下の位置を理解しましょう。

ランナーになったようなイメージで構え、自分のタイミングで踵で地面を押すようスタートを切ります。

ランナーの構え

踵で地面を押してスタートを切る

この走り込みのポイントは1歩目だけなので、5m程度のショートダッシュでOK。これを何百本と繰り返し、踵で地面を押す感覚を掴みます。

そうすると、下半身をうまく使うことができるため、このために走り込むというのも1つの方法ですね。

こういった方法の後に「野球の打ち方やバッティングフォームを習得する4ステップ」でお伝えした体の使い方をすれば、バッティングも変わりますよ。

このように、ここまでお伝えした、

1、練習をこなせるスタミナの養成
2、3~6歩でトップスピードにのるトレーニング
3、下半身のトレーニング
4、踵で地面を押すトレーニング

などの走り込みは、目的を持って行うことで適切な成果を得ることができるというわけです。

ですので、目的のない走り込みは不要ですが、上記のような走り込みであれば意味のある方法と言えますね。

 

野球選手に走り込みは必要?本当のメリットや4つの方法のまとめ

今回は、野球選手が行う走り込みの必要性について解説しました。

・走り込みをする前に、そもそも走り込みをする目的を整理することが重要
・持久力(スタミナ)をつけるための走り込みは必要
・ただ、目的がない走り込みは不要
・走り込みをしてもコントロールは良くならない

一番避けたい考え方は、

走り込めば、パフォーマンスが向上する

ということ。上記でも触れた通り、うまくなるためには練習やトレーニングが必要であり、走り込みではありません。

ここをはき違えると、ただの自己満で終わってしまう。そうならないためにも、走り込みの目的や中身を整理することが重要です。

今回の内容が少しでも参考になればうれしく思います。最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!

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